「お待たせしました」



 軽い挨拶と共に部屋に入ってきたシャマルは、人数分の湯気の立つティーカップを乗せた

盆を持っていた。臭いからして紅茶だろうと判断する。欲を言えば緑茶を持ってきて欲しい

ところだったが、持ってきてもらって文句も言えない。シャマル自身が紅茶を好んでいるの

だから、尚更である。



 男の礼儀としてその盆を受け取った恭也は、用意しておいた座布団をシャマルに促すが、

そのシャマルは呆然とシグナムを見つめ、座ろうとしない。視線に気づいたシグナムは座

ったままシャマルを見やる。



「……何だ、どうした?」

「シグナム、貴女そんな格好で恭也さんと同じ部屋で寝ていたの?」



 何を今更、とシグナムは恭也と顔を見合わせた。シグナムの格好は確かに扇情的であると

は思うが、実際には疚しいことなど何一つ起こっていないのだから、格好がどうであろうと

関係がない……はずもないが、シグナム自身が特にこだわっていないのに、自分だけどうこ

う言うのも男として負けたような気がして、最初に見た時からそのままになっている。



 それがシャマルには意外であったようで、顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。



「私が寝る時にこの格好をしているのは、お前も知っていることだろう」

「それはそうだけど、男性と一緒の部屋で寝るのにそんな格好をしてるとは思わなかったの

よ。それじゃあまるで、シグナムが恭也さんに迫ってるみたいで……」



 言っていて恥ずかしくなったのか、ちらちらと恭也をみやるシャマルの頬もさらに染まる。

彼女が何を想像しているのか、女心が分からないと昔から言われ続けた恭也にも察しがつい

た。



 頭の中を覗く術はないが、それが不正解であろうことは確信が持てた。どうやって誤解を

解いたものかと頭を捻っていると、シグナムがこれ見よがしにため息をついた。猛烈に嫌な

予感を感じた恭也だったが、止めるよりも先にシグナムは口を開いた。



「みたいも何も、既に迫った後だ」

「まぁ、そうなんでしょうけど……」

「だが、お前の想像しているようなことは何一つなかったと明言しておく」



 シャマルはまたも呆然と、シグナムを見つめた。先ほどと似たような顔つきだったが、考

えていることは、全く違うだろう。



「それは、その……私にも言うのを憚られるようなプレイをしたから、なかったことにしよ

うとしてるとか、そんな事情ではなくて?」

「騎士の名誉にかけて、何もない。ここでは会話をして、寝ているだけだ。性的な要素は皆

無と言っていい」

「それは……」



 驚愕と不審の目を向けるシャマルに、恭也は返す言葉もない。自分では十分に紳士的な対

応をしたつもりだったが、彼女の反応はその対応が完全な正解ではないということを語って

いた。シャマルは急に真面目ぶった顔つきになって居住まいを正すと、



「資格などはありませんが、私は医者でもあります。恭也さん、貴方は何か、子孫を残せな

いような、深刻な病気を患ったりしていませんか?」

「問題なく、至って健康です」

「では、性癖が常人とはほんの少しずれているとか? ご要望とあれば、同居人をシグナム

ではなく、ザフィーラにすることも可能ですけど」

「付き合うのなら女性がいいと考えています。人並み程度には性欲もあるつもりです」

「じゃあ……その……はやてちゃんとかヴィータちゃんみたいな幼い感じの女性に多大な興

味があるとか……」

「至って正常な趣味嗜好である……と、思います」

「じゃあ貴方は何が好きなんですか!」



 ならばどう答えたらいいのだ……そう思っても答えてくれる人間はいない。シグナムは自

分の役目は終わったとばかりに、無視を決め込んでいる。ことは自分の対外的な性癖に関わ

ることなだけに、自分のあらん限りの語彙を駆使して言い返すことも試みてはみたものの、

やはり言い合いで年長者に勝てるはずもなく、最後には何故かこちらが全面的に悪いという

ことで話は決着した。



 まったく……と、何故かぷりぷりと怒りながら着席するシャマルに平謝りしていると、よ

うやくシグナムが口を開いた。



「……主はやては?」

「ヴィータちゃんと一緒に寝てますよ。八神家の周囲の結界は健在、外ではザフィーラが警

護してくれています」

「つまりはいつも通り、ということか」



 カップを受け取ったシグナムは息を吹きかけて紅茶を冷ましながら、上目に恭也を睨みや

った。



「それがお前の望みなのだろう?」

「ザフィーラはともかく、ヴィータは提案そのものに反対するかもしれんからな。ある程度

話が纏まってから話した方が、俺のダメージは少なくなるだろうと判断した」

「ヴィータちゃんが反対するような話をなさるつもりで?」

「根っこの部分にある物はヴィータも理解してくれると、確信していますがね」



 だからと言って進んで殴られるような趣味を、恭也は持ち合わせていない。いずれ殴られ

るにしても、ワンクッションは置きたかった。



 シャマルにもカップを手渡し、盆はちゃぶ台の上に。それを囲んで、シグナム、シャマル

の間に腰を降ろす。



 二人の視線が、恭也に集中する。時刻は深夜……はやてが眠っている時間は何もしないと

いうのが、今のヴォルケンリッターの暗黙のルールだった。故に現在は主に倣い就寝してい

る時間だったが、恭也はその慣例を崩して、シャマルを部屋に呼び寄せたのだ。



「それで、話とはなんだ。態々こんな時間に集まったのだ、ただの茶飲み話ではあるまい?」

「茶を飲むのだから茶飲み話には違いないとは思うが……すまん、冗談だ。だからこの切先

を降ろせ」

「分かればそれでいい」



 一瞬で起動したレヴァンティンをやはり一瞬で待機状態に戻し、シグナムが無言で先を促

す。



 自分にはジョークのセンスがないのでは、という事実に遅まきながらに気づいた恭也は、

改めて気を入れなおし、話を切り出した。



「話というのは他でもない。管理局に降伏しないか?」
















「何を言い出すかと思えば……」



 一瞬前に自分で殴り倒した恭也の背中を踏みつけながら、シグナムはため息を漏らした。

恭也が態々話の場を設けたのだから、自分達の活動に関する物言いだとは察していたが、言

うに事を書いて『管理局への降伏』と来た。



 今までの自分を否定するような提案である。手が出るのも仕方のないことだと自分を納得

させはしたが、足の下でぴくりとも動かない恭也に、当たり所でも悪かったのかと流石に不

安になる。



 動かない恭也を守護騎士の医療担当が検分するが、ため息をついてちゃぶ台に戻るのを見

て、頑丈な男だ……と安心すると共に、沸々と怒りが湧き上がってきた。



 ならば頑丈ついでにもう少し激しくしても構うまいと、踏みつける足に力を込めると、カ

エルのようなうめき声を発して、恭也が息を吹き返した。踏みつけるのはそのままに、咳き

込む恭也に顔を近づけると、蘇生した恭也が非難の目を向けてくる。



 思わず平手が出た。乾いた音が、深夜の部屋に響き渡る。



「何故打たれねばならんのだ……」

「それが理解できないのなら、もう一度殴って理解させるまでだが、私の拳が所望か?」

「拳はもう腹一杯だが、俺の話は聞いてほしい」

「いいだろう」



 爪先で恭也をひっくり返し、掛け声一つ、腹に拳を叩き込む。くの字になって転げまわる

恭也を他所に座布団に座りなおし、少し冷めてしまった紅茶を啜った。



「少しだけ不愉快になった件はこれで勘弁してやろう。ここからは真面目な話をするといい。

私にもシャマルにも、聞く用意はある」

「俺は最初から真面目な話をしていたつもりなのだが……」



 腹を摩りながら起き上がり、恭也も紅茶を啜る。



「先ほども言ったが、管理局に降伏しないかということだ」

「降伏とは自分の劣勢を認め、相手の軍門に下ることだ。今の段階でそれをしろというのは、

我々が劣勢だと判断した……そう解釈して構わないだろうか」

「その通りだ。そして降伏というのは、劣勢のうちにするのが賢いやり方だ。決定的な敗北

を突きつけられてからでは、得られる物は少ない」

「我々が管理局を出し抜き、目的を達成するとは考えられんのか?」

「俺はお前達の『作戦』に参加している訳ではないが、お前達四人で出し抜ける程、管理局

は無能の集団ではないと思っている」

「これまでは、何とかなった」

「これからも何とかなるとは限らないだろう。主義主張の話をしているのではない。俺は、

現実的な話をしているのだ。つまり――」



 ちゃぶ台の上に手をつき、恭也がシグナムの、シャマルの瞳を覗き込む。



「どうしたら、はやてが、最も幸福になれるか……俺達が考えるべきはそこだ」

「我々が管理局に降れば、主はやては幸福になれると?」

「可能性は高いだろうと思う。少なくとも、お前達だけで事に当たるよりは」

「我々が何をしているか、お前は――」

「察するに、魔力の高い者から魔力を回収しているのだろう?」



 当たらずとも遠からずと言ったところだった。恭也が現場にいたのは一回、それも自身が

捕虜になった時だけであったが、その時に確かに、白服の魔導師からシャマルが魔力を蒐集

するのも目撃していた。



 その後の突撃のせいで捕虜となった訳だが、現場を見ていたのなら、後は若干の魔法の知

識があれば何をしていたのかくらいは推察できるだろう。



 だが、シグナムの見立てでは魔導師としての恭也はまだまだ駆け出しである。発言に確信

があるのか、もしかしたらかまをかけているだけではないのか、確信を得ることはできなか

ったが……



「その通りだ」



 首肯した。シャマルがちら、と視線を送ってくる。異論があるような雰囲気ではない。判

断は任せる、ということだろう。念話を使えば済むことであったが、恭也が念話を使えない

この状況で、自分達だけそういった物を使うのは恭也に対する裏切りである。



 彼のことは身内と認めたのだ。ならば出来る限り隠し事はしない。それが、暗黙の内に決

められた、最低限のルールだった。



「そして、管理局とお前達が敵対していることを、はやては知らんのだろう。目的と合わせ

て考えると、それ以前にお前達がそういったことをしていることも知らない可能性が高い。

知らない……いや、知らせていないか? はやてならば、ああいったことは好まないだろう

からな。にも関わらず、はやての騎士たるお前達がこういったことをしているということは、

そうしないとはやてに危険が及ぶ……そんなところだろう」

「我々の生命維持に魔力が必要……とは考えられんのか?」

「そう問うということはそうではないと言っているようなものだが……それはなかろう?」



 ない、と明示しただけで恭也は根拠を示さない。



「そう思う根拠を聞いてもいいだろうか」

「お前達ならばはやての意思を無視してまでそんなことはしない。俺は、そう思う」

「短絡的な男だ」

「そうでなければ異なる結論に達していたのだろうからな。ならば、自分が短絡的であるこ

とに感謝するよ」



 事も無げに恭也は言う。自分達のことを理解しようと努めてくれ、そして、本来であれば

関係ないはずの事柄にまで平気で首を突っ込んでくる。



 客観的に見れば、シグナム達は犯罪者で、恭也はそれを取り締まる立場にある。犯罪者の

ための利益を考えることまでは、恭也の仕事に含まれていないはずだった。



 時代が変わり、管理局員全てが恭也のような考え方になったのだとしたら、シグナムとて

彼らの手を借りることに異論はないが、シグナムだけでなく、ヴォルケンリッター全員は人

間というものが如何に汚いかということを嫌というほど知っている。



 集まった人間は利によって動き、高潔な人間であっても故あれば裏切る。恭也個人は信用

出来るし、彼の物言いならば命を賭けるに値するが、彼の所属する組織まで信用できるかと

言えば、それはまた別の問題だ。



「お前の主張は理解した」



 視線を向けると、シャマルは小さく首肯した。決定権は、自分にある。シグナムは暫く逡

巡すると、大きく息を吐く。



「我々が軍門に降ったとして、奴らが我々に、主はやてに害を成さないことは、どうして保

証できる? 我らの身は現代の世でも希少だ。我々が弄ばれることで主はやてが命を拾うな

らばいくらでもそうするが、そうでないのなら、やはり我々は管理局に降ることは出来ん。

我らを降したいのであれば、主はやての安全を保障しろ」

「この場では保障しかねる。そういった話は、俺の上司としてほしい。そのための会合の場

をセッティングすることくらいは、俺にだって出来るが……」

「それが罠でない可能性は?」



 恭也が会合のつもりでセッティングしたとしても、その上司が裏切る可能性は否定できな

い。恭也が従っているような相手だと考えれば信頼するに値するのだろうが、会ったことも

ないような相手に命を預けるなど、将として出来ることではない。



「……否定できない」

 

 苦虫を噛み潰したような顔。恭也は、自分の力ではどうにもならないことがあるのを知っ

ている。恭也くらいの若さであれば、思いだけでどうにかなると錯覚しても不思議はないの

だが、永い時を生きてきたシグナムが驚くほどに、恭也は現実をきちんと見据えていた。



 そんな恭也だから、信頼するつもりになったのだ。今の恭也の顔は、敵であって自分達の

ことを考え、そして心を痛めているという証なのだ。



「どれ程の助けになるかは分からんが、全てが終わった後、お前が事態の解決に尽力してい

たことを口添えしてやる。話はこれで終わりでいいか?」

「…………いいはずがあるまい」

「ならば聞こう。お前はこれ以上、我々に何を提示できる?」

「俺の命を賭ける」



 やはり事も無げに、恭也はそう言った。



「お前達のために、命を賭けよう。はやてに害が及びそうになったら、俺が助ける。俺の命

がある限り、お前達がはやてから離れていても、はやてに害を成そうという輩には指一本触

れさせない」

「そのために、お前が管理局と敵対することになっても?」

「守りたい人を守れないのなら、そんな組織に所属する価値などない」

「お前の覚悟を、力量を知らない訳ではない。その物言いを信じるとして、お前が主はやて

を守りきれるという保障はないぞ?」

「それならば仕方がない。俺が提示出来るのはここまでだ。ただ、はやてとお前達が心の底

から笑って暮らすためには、これ以上、誰の手を汚すわけにもいかないのだ、ということは

理解してほしい。そのためになら、俺は尽力を惜しまないつもりだ」

「…………お前は守護騎士ではなく、人間だ。我らにそこまでする必要はない。何がお前を

そこまでさせるのだ」

「家族が、仲間が困っているのだ。助けるのは当然のことだろう?」



 紅茶を飲もうとして、それが空になっていることに気づいた。空のカップを持ち上げると、

シャマルがそれに新しく紅茶を注ぐ。少し温くなってしまった紅茶を一度啜り、シグナムは

恭也を睨みやった。



「大言壮語もいいところだ。お前一人の力で、主はやてをお救いすることが出来るとでも?」

「青臭い物言いで済まないが、俺は絆の力というものを信じている。お前達を助けようと思

ってくれる人間は、管理局にだっているだろう。俺を信じてくれるのなら、彼らのことも信

じて欲しい。皆で協力すれば、今よりもいい結果が得られるはずだ」

「管理局が我らを受け入れなければ?」

「その時はその時だ。現状を維持するなり、違う方法を模索するなり、好きにすればいい。

その時は俺も力を貸すから、そのつもりで居てくれると嬉しい」

「故あれば裏切るのなら、お前は何故管理局に身を置いているのだ?」

「主のいなくなってしまった俺には、最も力を生かせそうな場所が管理局であっただけだ。

それに、妹が先に局に就職を決めてしまったのでな。そのフォローのため、というのもある」

「お前にも主がいたのか?」

「美しく、聡明で、強く、気高い女性だった。望みを叶えて、今は遠くにいってしまったが」



 本当に、その主を尊敬していたのだろう。どこか遠くを見るような恭也の視線には、畏敬

の念が篭っていた。彼に主がいたというのは初めて聞く話である。騎士として、その主とや

らに興味が沸いたが、今は恭也個人の話をする時ではない。



 緊張した面持ちで、恭也が問うてくる。



「返答はいかに」

「他ならぬお前の頼みだ。交渉の席には着かせてもらうが、我らの要求が飲まれない時は、

我らの目的が達成されるまで、道が交わることはないと思え」


 それが最大限の譲歩である。どんなことをしても、というだけの旨みがシグナム達にはな

い。恭也の頼みであっても、故あれば裏切ることを承知させるのが、最低限の条件だ。


「百も承知している。提案した身としては、そうならないことを祈るばかりだ」


 だが、建前ですら裏切りを示唆している、降伏を提案した立場からすれば最低に近い合意
にも関わらず、恭也は微かに笑みを浮かべ、喜んだ。

 それだけだった。話はそれで終わりと、恭也は率先してカップを回収し始める。それ以上

何も聞く気配のない恭也に、シグナムの方から思わず問いかけた。



「聞かないのか? 我らの目的について」

「俺は頭が悪いからな。はやてのために何かをしている、それ以上のことに興味はない。何

をしていようと、はやてははやてで、お前達はお前達だ」



 興味がないということはなかろうが、本当に自分から聞くつもりはないらしい。



 だが話が纏まれば恭也よりも先に、今の段階では顔も知らないような連中に、自分達の素

性を話さなければいけなくなる。



 命を賭けるとまで、恭也は言った。そんな男に対して、それは不義理である。



 だが、その時に話すのと、今話すのでは、言葉の重みが違う。今素性を打ち明けることは、

恭也を本当の意味での共犯者としてしまう。闇の書がどういうもので、守護騎士が何なのか

を知れば、恭也は地獄の果てまででも着いてくる。



 自分の言葉は、恭也を不幸にするかもしれない。例えこの先どんな状況になったとしても、

素性を知ってさえいなければ、管理局にも戻り易いだろう。何も知らないと言えばよく、事

実何も知らないのだから。



 シグナムも、シャマルも、恭也を仲間と認めていたが、共犯者にしたい訳ではない。敵対

組織に所属する身で、尽力してくれた。それだけで十分だ。ここで秘密を打ち明けることは、

恩を仇で返すことにならないか……



「今からお前に、我らの秘密を話す。闇の書と、我らについてだ」



 恭也はそれを止めようとはしなかった。黙って、シグナムを見つめている。



「これを聞けば、引き返すことは出来ない。最悪の時が訪れたら、お前は我らと共に命を落

とすことになる。昨日まで仲間であった者達と戦うことになるやもしれん。だから、お前に

は私の話を聞かないという権利がある。それを責めることはしない。お前は我らのために力

を尽くしてくれようとしている。それだけで我々には十分だからだ」



 自分は卑怯だ、とシグナムは思った。こういう言い方をすれば、恭也がどう答えるかなど、

考えるまでもない。ここで否というような男であれば、自分たちに管理局に降れなどと言う

はずもない。



 無論だ、と恭也は答えた。その答えに安心している自分がいる。見れば、シャマルも安堵

のため息をついていた。本当の意味で仲間にあることを、恭也が承知してくれた。それが堪

らなく嬉しい。



「では、話そう。我らと我らの主、そして闇の書について。騎士でなくとも、人であっても、

お前は――







 ――我らの同胞なのだから」