『――夜分遅くに、失礼する』



 失礼も何もない。突然声が頭の中に響いてきたのだ。よほど肝の据わった人間でも驚くだ

ろうし、ましてや自分は――とある友人にはそんな扱いをされていたが――かよわい少女な

のだ。ベッドの上でひっくり返り、壁とベッドの隙間に挟まったとしても、非難されること

はないだろう。



『……取り込んでいるようだったら出直すが?』

「な、何とか大丈夫……」



 隙間から這い出し声に応えるものの、その主が何処にいるのか分からないため、何処を向

いていいのか分からない。



 美由希が自分の部屋の中できょろきょろするという、傍目に見たら世にも間抜けな醜態を

晒していると、頭の中の声が、妙な唸り声を挙げた……ように聞こえた。



 姿は見えないが、もしあったとしたら今のは落胆のため息だったのだろう。自分のこき下

ろし方がまるで何処かの誰かのようで、得体の知れない相手にもじわじわと腹が立ってくる。



『大丈夫なら聞いてもらおうか。話というのは他でもない、汝の友人であるロクデナシにつ

いてだ』

「恭也がどうかした?」



 ロクデナシという言葉で真っ先に連想したのが知れたら、どんな目に合わされる解ったも

のではないが、この場で話題に上るような存在でロクデナシと言ったら、美由希の交友範囲

には恭也しか該当する人間がいなかった。



 その恭也改めロクデナシは、日中に文字通り消えて失せてから居所が要として知れない。

不審に思って美由希からも何度か連絡をしてみたものの、圏外にいるのか電源を切っている

のか……とにかく彼とは連絡がつかなかった。



 得体の知れない何かに、巻き込まれている。いくら美由希でも、それくらいは解った。



 ならば、助けないといけない。自分の力が及ぶ範囲の出来事であるという確証はもちろん

なかったが、友人が困っている時に見捨てていい、という様なことを、義父も義兄も教えた

りはしなかった。



 とは言え、いくら意気込んでみても、肝心の恭也の居所が解らなければ助けようもない。



 しかし、図書館とその周辺で、はやてやすずか達と一緒に会う以外に特に接点のない美由

希には、恭也が行きそうな場所に心当たりなどなく、一度だけ耳にした曖昧な記憶を頼りに、

はやての家を探しだしてはみたが、留守のようだった。無論、はやてにも連絡はつかない。



 それ以降も、図書館周辺を中心に市内を彷徨ってみたが、日没まで手を尽くしても、恭也

の影すら踏むことはできなかった。



 共通の友人であるすずかに連絡をしようかとも思ったが、『恭也が女性と一緒に文字通り

消えたから、何だかヤバい』とは伝え難かったし、難事に彼女を巻き込むのも気が引けた。



 まさに、八方塞である。自分が恭也のことを何も知らないのだと思い知ると共に、どうに

か恭也を助けなければ、と焦燥感だけが募る。



 だが、当てもないこの状況では、何ができるはずもない。



 落ち込んだまま家に帰り、一風呂を浴びて、部屋で黙考する。これから自分はどうするべ

きなのか……当てもなく探し続けることがいいのか、それとも、恭也が自分で事態を解決す

ることを信じ、また何事もなく彼と過ごす日が来るのをただ待つのか……



 いまだ嘗てないほどに、真剣に悩んでいたところに、先の声だ。正直、得体が知れず、気

味が悪い。普通に考えれば、そんな存在の声に耳を傾けるべきでないのは解っていたが、恭

也のことを知っているのなら、別だった。



 自分では何をしても見つけられなかった手がかりなのだ。恭也のことを教えてくれるのな

ら、今は悪魔とだって友達になれる。



『あれはな、汝も知っての通り、今窮地に立っておる』

「私に、それを助けろっていうんでしょ? 任せておいて、これでも腕には――」

『いや。実を言えば汝の助けは必要ない。あれはあれなりに、一人で事態を解決することだ

ろう』

「…………なに、恭也は無事なの」

『無事に済むかと言えば、そうではなかろうな。まぁ、敵も馬鹿ではないようであるし、収

まるべきとこには収まる、そんなところで落ちるであろう。誰が勝つことになるのかと言え

ば……正直、我にも解らぬ』



 声の話は容量を得ない。恭也に訪れたのが深刻な事態ではない、というのは理解できたが、

それだけの話だ。何事にも困っていないとは、言っていない。ならば、美由希のスタンスに

変わりはなかった。



「結局のところ、貴方は私に何をさせたいの?」

『あれは他人には不可能なことを容易にこなすが、他人が簡単に出来ることを、こなせぬ。

汝にはあれのために、一仕事してもらいたい』

「具体的にはどんな?」

『汝は腕に自信があるのだろう? ならば、腕を披露するのが筋というもの』

「腕ねぇ……」



 声を聞きながら余所行きの、動きやすい服に袖を通す。状態を確認した飛針をホルスター

に納めて装着し、鋼糸も切断目的の0番を用意。模造刀を通り越し、実母から渡された『龍

鱗』に手を伸ばしたところで、



『それは必要ない』



 と、声に遮られた。



「……私の武器は、これだよ?」

『汝の腕では、それでは斬れぬ。斬れる刀に心当たりがあろう? ならば、それを使うがい

い』

「貴方はどうしてそんなことまで知ってるの」



 あの出来事は、家族にだって話していない。恭也が話していなければ、知っているのは彼

と、共にいたシグナム、それと自分だけのはずだった。



 美由希の心中を察したのか、声が笑った……ような気配があった。



『我は何でも知っておるのだ。解ったのなら、さっさと行くがいい。あの男に恩を売る、最

大のチャンスであるぞ』

「恩を売るとまで聞いちゃあ、行かない訳にはいかないよね……それで、優しい声さん。貴

方のお名前は?」

『我は世に存在せぬ。因縁を結んだあれ以外の記憶に、我の名が残ることはなかろうが、あ

れのために戦う者に、名乗らぬのも不義理か……』



 用意を整え、部屋を出る美由希の脳裏で、声は名乗った。







『我の名は――』















































「何の用だ、管理局員」



 探していた二人の、片割れ――外見の上では違いのない、仮面の男――が、恭也を見て声

を上げた。その声も、体格も、恭也の記憶にある二人とはまるで異なっていたが、感じる気

配は、眼前の二人が仲間達の仇であることを物語っていた。



 あくまでもシラを切るつもりらしい、仮面の男の言葉を、恭也は一蹴する。



「茶番を続けるつもりなら、その仮面を断ち割るぞ。時間の無駄だ、さっさと本性を現すが

いい」



 恭也の言葉には、一切の感情がなかった。路傍の石でも見るかのように仮面の男二人をみ

やり、言葉に嘘がないことを示すように、プレシアの鯉口を切った。



 言葉が通らなければ、本当に切る――法を犯すことになっても、誰に悲しまれようとも、

今の自分にならそれが成せる。どんな鈍い神経をした人間でも、今の自分に冗談の類が通じ

ないことは、はっきりと解るだろう。



「まったく……」



 仮面の男の、一人がぼやいた。その声は既に女性のものに変わっており、表情が読み取れ

ないにも関わらず、声の主がこの状況を楽しんでいることを感じさせるほど、今のこの場に

そぐわないものだった。



 恭也の苛立ちの募る中、男達は仮面を取ると、姿を変化させた。



「クロスケが先に来ると思ってたのに、とんだ伏兵も居たもんだよ。あんたの世界じゃあ、

皆、あんたみたいだったりするのかい?」

「世間話をするつもりはない」



 ともすれば友好的にすら見えるリーゼロッテとは対象的に、恭也の声は驚くほどに冷たい。

プレシアの柄に手をかけたまま、一歩、一歩と、使い魔二人に歩み寄る。



「管理局はお前達の行動を看過しない。リンディ・ハラオウン提督より、お前達の捕縛命令

が出ている。大人しく、縛に着け」

「嫌だと言ったら?」



 リーゼロッテの口の端が上がる。嫌らしい、人の神経を逆撫でする声と、表情。恭也のプ

レシアを握る手にも、力が篭った。殺してやる……そんな思考が恭也を支配した。



 仇を……シャマルの声が思い出される。シグナムも、はやても、ヴィータも、ザフィーラ

も、自分の仲間の命を奪ったのは、こいつらだ。



 一瞬にしてプレシアを抜き放ち、リーゼロッテの眼前に突きつける。顔色一つ、変えては

いない。こうなることを望んでいるかのような、余裕に満ちた表情。





 殺しても、殺したりない。





 だが、二人の表情と態度から、このまま事を進めたとしても、彼女達にに苦しみを与える

ことは出来ないことも、同時に察した。



 彼女達は、その辺りの殺人鬼とは違う。世界平和のためという、大義名分があるのだ。よ

り多くの人間を守れるのなら、少数は犠牲にしてもいい、多数決の理論。

 

 存在の引き算。斬り捨てられた人間からすれば堪ったものではないが、確実に、斬り捨て

られる人間よりも多くの人間を助けることが出来るのなら、建前は別にしても、根っこの部

分で受け入れられるだろう。痛みを受けるのは斬り捨てられた忍毛んだけで、助かる人間に、

痛みなどないのだから。



 管理局に引き渡されれば、彼女達は裁かれるだろう。



 法を犯すようなことをしたのだ。どんな形であれ、管理局を追われることは間違いない。

今までの功績は全て忘れさられ、人々は彼女らを蔑むようになるかもしれない。



 しかし、それでも。法を犯した事実の前にも、人を殺めた罪悪感の前にも、とてもとても

小さな物かもしれないが、彼女らの心の中には、正しいことをしたのだという、満足感が生

まれる。



 恭也にはそれが、我慢がならなかった。



 大切な人を奪われた。壊してはいけないものを、壊したのだ。彼女達には、思い知らせな

ければならない。



 心の充足を胸に天寿を全うするような、安息に満ちた未来を、彼女らにくれてやる訳には

いかないのだ。この思いが遂げられるのなら、自分は、どんな目になってもいい。仇敵に、

思い知らせなければならないのだ。殺された仲間のために、何よりも、自分のために。



 そういう考えに至ると、恭也の頭は急速に冷えていった。



 それを成すには、どうしたらいいのか。生まれて初めて高速に回転した頭脳が、たった一

つの結論を導き出した。



 簡単なことだった。相手の望みを、何一つ叶えてやらなければいい。望まない言葉を、浴

びせ続けててやればいい。心が痛み、魂が悲鳴を挙げるような、容赦のない攻撃を。



 仇は、必ず取る。



 心に強く、そう思い定めると、恭也はプレシアを鞘に納めた。



(主様?)



 戦う、と思っていたのだろう。臨戦態勢にあったプレシアの不満の声が、恭也の脳裏に響

く。自分だって、今の今までそうだったのだ。不満に思う気持ちも、理解出来る。



(俺は、戦わないよ、プレシア)

(何を仰います。主様のお仲間の、敵討ちなのでしょう? 思い知らせないで、どうします

か。復讐は、全ての理性ある存在の魂に刻まれた、正等な行いですわ。主様にその意思がお

ありなら、私は仇敵の最後の一人を討ち果たすまで、凶刃で在り続けます。主様なら、出来

ます。それが、お分かりにならないんですの?)

(この上ないほどに、解る。だがプレシア、剣を執って戦うことだけが、復讐の方法ではな

いのだ。剣であるお前には、受け入れ難いことかもしれない。俺も、こんなことをするのは

初めてだ。成功するかは分からない。しかし、こうしなければ、奴らに思い知らせることは

出来ないのだ。だから頼む。俺の復讐を成すために、見守ってはくれないか?)

(主様の心底の望みを成す手助けを、私にするなと仰いますの?)

(すまない……)

(…………私は、恭也・テスタロッサの刃、プレシアですわ。主様の望みは、私の望み。主

様の仇敵は、私の仇敵です。それが復讐を成す最良の方法と主様がお考えなら、私が否定す

ることはありませんわ。私はいつも、主様と共にありますもの)

(すまない……)



 心中でもう一度繰り返し、プレシアの柄から手を離した。



 リーゼロッテの瞳を、真っ直ぐに見つめる。



 不敵になれ。仲間の復讐は、ここから始まるのだ。





「嫌だというのなら、しょうがない。時間をおかずにクロノは来るでしょう。忌々しいこと

ではありますが、貴女方を捕縛する栄誉は、奴に与えることにします」



 恭也の言葉に、リーゼ達は目を剥いた。



 一歩踏み込んでくるリーゼロッテに合わせて、一歩退く。



「正気かい? 何のためにここまで来たんだ。仲間の仇を、討つためなんだろ?」

「それ以前に、俺は管理局員です。貴女方のように法を犯すことなど、出来るはずもない。

貴女方は、法によって罰せられ、裁きを受けるべきだ」

「仇が目の前にいて、あんたには戦う力があるってのに、あたし達を見過ごすってのかい?」

「俺の仕事は、貴女方の捕縛です。そして戦闘とは、捕縛の手段の一つであり、それ自体が

目的なのではありません。既に闇の書の暴走は成り、貴女方の目的はほぼ達成された。最終

行動を成すのは、何も貴女方でなくとも構わないのでしょう?」



 確証があった訳ではなかったが、恭也の問いに、鉄面皮を保っていたリーゼアリアの眉が

僅かに動いた。



「貴女方が逃げないのならば、無理に戦う必要もない」

「あんたは……それでも男か!」



 リーゼロッテの拳が飛んで、恭也の頬を打った。腰の入った、久しく受けていなかった一

撃に、意識が飛びかける。



 怒りは沸かない。打たれて、恭也の中にあるのは喜びだった。口の中に広がる血の味を噛

み締めながら、リーゼロッテを真似て、口の端を挙げて笑う。



「男です。だから、戦わないのですよ。俺には守るべきものがあり、それを守っているだけ

です。貴女方が犯した物を、守ろうとしているのです」

「何も解らない小僧が!」



 拳が飛ぶ。今度は、腹を打った。抉るように、二発――後の方の拳で、骨に皹が入った感

触があり、痛みに顔を顰めるが、自分の執った方法に効果があったことを確信した恭也は、

それを無理やり押さえ込んで、また、嘲笑ってみせた。



「何も解っていないのは、貴女方だ。今まで守ってきたものを、積み上げてきたものを台無

しにした。目先の平和がそれ程大事ですか? 何を犠牲にしても守らなければならないもの

があると、解らないのですか?」

「あたし達が何もしなかったら、多くの人が死ぬんだ!」



 リーゼロッテの身体が霞み、鳩尾に前蹴りが入る。殺意すら篭ったその一撃に、恭也の身

体は飛び、フェンスに叩きつけられた。肺の中の空気が漏れ、身体が勝手に空気を求めるよ

りも早く、飛ぶように駆けたリーゼロッテの拳が、思うままに恭也を打ち続けた。



「お父様の苦しみを何も知らないくせに! あたし達が、やりたくてこんなことしてるとで

も思ってるのか! いいか、誰かが、やらなきゃいけないんだよ! たった一人を犠牲にす

ることで、それ以外の人の安全を守れるなら、やるしかないんだ!」

「誰も死ななくていい、そんな選択肢だって、あったはずだ。貴女方は、それを放棄した!」

「そんなものがあるなら――」



 襟首を掴まれ、力任せに中空に放り投げられる。体勢は、整えられる。足場を作って距離

を取ればいい。シグナム達といた時とは違う。今はこの手に、プレシアがあるのだから。



 だが、恭也はそれらの一切をせず、受身すら取らずに、後を追って跳んだリーゼロッテの

踵が、振り下ろされるのを見つめた。



「――言ってみろっ!!」



 全ての衝撃を逃がさぬまま、屋上に、叩きつけられる。



 後を追うように着地したリーゼロッテが、恭也の襟首を掴み、顔を寄せた。



「私は、あんたの仲間達を殺したよ。それを、仕方のないことだとは言わない。それを解っ

た上で、お父様は決断されたんだ。私だって、後悔はしない。でもね」



 腕の力が緩み、身体が投げ出される。着地も出来ない。額から流れた血を拭いもせず、地

に這い蹲るようにしながら、リーゼロッテを見上げた。



「あんたにだけは、あたし達に復讐する権利がある。あたし達が犠牲にすると定めた、八神

はやてとその守護騎士達の仲間……あんたがあたしを倒せるのなら、殺されたっていいだか

ら、実行する機会をあげるよ。例えあんたがこの場であたしを殺したとしても、あんたが罪

に問われることはない。そういう風に出来てるのさ。正義感もいらないよ。あたしが憎いな

ら、それをぶつければいい。それともあんたには、あたしを憎む感情すら、ないっていうの

かい」

「俺の憎しみで貴女が殺せるのなら、貴女はとっくに死んでいるでしょう」

「……解らないね。あたしがあんたの立場だったら、あたしを殺してるよ。大切な人の仇だ。

殺したって殺したりない。あんたに憎しみがあるって言うなら、何がそれを妨げてるのさ」

「妨げられてなど、いませんよ。俺は今、復讐を成している」



 思えば、恭也・テスタロッサが生き残っていること、それ自体がイレギュラーなのだ。作

戦行動の成功を第一に考えるのなら、八神家のメンバーがこの時点で管理局に合流するなど

あってはならない。些細な情報の漏洩から、目的が達成できないかもしれない。その危険性

を排除するなら、最低でも自分は彼女らに拘束されていなければならない。



 にも関わらず、ここにこうして、リーゼロッテと相対しているということは、そこに彼女

らの意思が介在しているということ。



 つまりは、恭也・テスタロッサにはまだ、彼女らの計画において果たすべき役割があり、

そのために生かされている。



 彼女らが、自分に求めていること。それは――



「貴女方は俺を、戦わせたいのでしょう? 俺と戦うことで、体裁を保とうとしている。復

讐をする機会を与える? 馬鹿を言わないでいただきたい。貴女方は、自分達が満足するた

めに、俺に痛めつけられようとしているだけだ」



 恭也の物言いに、リーゼロッテは大きくため息を吐くと右足を大きく振りかぶり、力を込

めて恭也の左手を踏みつけた。骨の砕ける鈍い音……しかし痛みが、恭也の意識をさらに覚

醒させる。



「あたし達が、なんだって?」

「自分を慰めるために、俺と戦おうとしている。そう申し上げたのですよ。それでせめて、

罪の意識を軽減するために、俺をこうして生かしておいた。実に、姑息です」



 意識が遠くなる――それを、舌の先を噛み千切って堪えた。口内に溢れる血を吐き出し、

ゆっくりと立ち上がる。初めて、リーゼロッテが後ろに下がった。恭也の嘲笑みが、深く

なる。



「そんなことのために利用されてなるものか。そんなことで、俺の思いは風化させない。仲

間の死を前に、俺と、お前達の間の溝は永久に埋まることはない。死しても尚、俺は、お前

達を絶対に許さん」



 歩みより、倒れこむようにして、リーゼロッテを抱きしめる。その耳に顔を寄せ、囁いた。



「誰が許しても、俺は許さん。償いの機会など与えるものか。お前達の罪は、俺が風化させ

ない。罪の意識に苛まれながら――」



 耳のすぐ近くであがった、リーゼロッテの絶叫が、どこか遠くに聞こえた。突き飛ばされ、

今まさに振りぬかれようとしている彼女の拳を、見るとはなしに見つめながら、彼女の記憶

に永遠に刻み込まれるよう、出来うる限りの邪悪な笑みを浮かべた。



「――死んでいけ」



























 顔面を正面から拳で打ち抜かれた恭也は、大型獣にでも跳ね飛ばされたような勢いで吹き

飛び、フェンスにぶつかって漸く止まった。既に気を失っており、顔から地面に倒れこんだ

恭也はぴくりとも動かなくなっていた。



「ロッテ……」



 成り行きを黙って見守っていたリーゼアリアが、声を挙げる。その中にまぎれた非難の色

に、リーゼロッテは、腹の底から叫び声を挙げた。



 力任せに振りぬいた拳が余波を生み、出入り口を粉砕する。いくら魔力を隠蔽するための

結界の中だとしても、大騒ぎをしては気づかれる。管理局側に見つかるのならともかく、闇

の書に見つかっては意味がない。



 注意をしようとリーゼアリアが声をかけようにも、双子の姉妹であるリーゼロッテは、半

身である彼女が見たこともないほどに、取り乱していた。気分屋に見えるが、彼女とて歴戦

の魔導師である。感情の制御の仕方は心得ていたし、此度の作戦行動にも覚悟をして臨んだ、

そのはずである。



 恭也を生かしておいたことに、深い意味があった訳ではない。生きていても死んでいても

大勢に影響はなかった。たまたま生きて、無事に行動できたから、彼はここまでやってきた

のだ。そこに、それ以上の意味はない。



 リーゼロッテも、それは知っているはずだった。恭也の言葉は、繰言であると。



 そのはずなのに、恭也の言葉はリーゼロッテを苛んだ。流石にここまで荒れるのは一過性

のことだろうが、恭也・テスタロッサは剣を使うこともなく、彼女をこんな風にした。



 恭也がこれほどまでの執念を持つならば、野放しになどせず、早急に対処しておくべきだ

ったのかもしれない。リーゼロッテにここまでの言葉を放った彼の存在は、自分達に、引い

ては主に、禍根を残すことになる。



 主の人生は、闇の書事件と共に完結するのではない。恨みを持った人間は、必ず自分達に

とってマイナスになる。



 彼は、ここで殺しておくべきかもしれない。



 法や倫理を無視した、独善的な思考でもって、冷静に、冷酷に、リーゼアリアはそう考え

た。主が失意を抱きながらこの世を去ることなど、あってはならないのだ。そのためには、

恭也・テスタロッサは邪魔である。



 大きく、大きくため息をついた。それらの思考を、追い出すように。



 思考が、危険な偏りを見せている。対象の直接排除など、最終手段だ。それを前提に行動

するなど、どんな時だってあってはならない。



「ロッテ。落ち着きなさい、ロッテ」



 半身は、何か見えないモノに怯えるように、両手で頭を抱え、荒い息をついていた。肩に

手を載せると、彼女は涙に濡れた顔で振り返る。



「解っていたはずでしょう。これは、恨みをかう仕事だと。なのに、どうして泣くの?」

「あんないい娘を犠牲にしてさ、守護騎士達も、闇の書に喰らわせて、お父様の名誉も傷つ

けて、後輩には、見っとも無く当り散らしてさ……」

「泣き言を言う権利なんて、私達にはない。やると決めた時から、私達には全てを受け入れ

る義務がある。お父様は、管理局を追われるでしょう。私達は、そんなお父様を支えないと

いけないのよ? そんな私達が、涙を浮かべていいはずがあって?」

「…………ない」

「なら、涙を拭きなさい。私達にはまだ、やるべきことがあるのよ」

「わかった、わかったよ」



 袖で涙を拭き、息を吐く。自分で叩きのめした恭也を見やりながら、リーゼロッテは苦笑

を浮かべた。



「解ってたつもりだけどさ、嫌なもんだね、恨みをかうってのは」

「それで、少しでも多くの人を守れるのなら……お父様と、誓ったはずよね」

「そうだったね……そうだった」



 呟いたリーゼロッテは、まだ倒れた恭也を見つめている。すぐには、割り切れないのかも

しれない。感傷など、彼女には無縁の感情だと思っていたが、数十年の付き合いなのに、物

憂げな横顔など、初めて見た気さえする。



 ふいに、リーゼロッテの視線が、あさっての方向に向けられた。それを追うようにして、

リーゼアリアの索敵能力に、一つの気配がかかった。



 魔力の塊が、移動している。リンカーコアを持った、管理世界の魔導師ではない。恭也・

テスタロッサと同じタイプの――魔導師協会が認めていない技術を扱う者を、魔導師とは呼

はないのだが、分類するなら、魔導師としか呼べない――魔導師だった。



 隠蔽のための結界は、機能している。管理世界の魔導師なら、十全に騙しうる結界だ。ク

ロノくらいの実力者でも、容易には発見できない。況や、他の雑兵をや。



 だが、恭也・テスタロッサは、自分達を見つけた。執務官を騙しうるほどの結界を無視す

るかのごとく、真っ直ぐにこちらに向かってきた。



 外の気配も、凄まじいまでの速度でこちらに迫ってきている。恭也・テスタロッサと同じ

技術を扱う者を、リーゼアリアは把握していない。外の気配に、こちらとの戦闘の意思があ

るとは限らないが、ここに来て何も起こらずにやり過ごせると思えるほど、楽観的でもなか

った。



 地上からビルの壁を駆け上がった気配が、結界を断ち斬った。リーゼロッテが、前に立つ。





 現れたのは――














































『もう二度と、お会いすることはないと思っておりました』



 おぼろげな記憶を元に山の中を走り回り、湖に到着する頃には、体力に自信のあった美由

希の息も、あがっていた。



 如何なる理由であったのか、当の美由希にも覚えがなかったのだが、恭也が窮地に立たさ

れているという確信に近い思いを胸に、ここまで駆けてきた。



 美由希の知る限り、得体の知れないモノに立ち向かえる、唯一の手段。



 そして、恭也と自分を結びつける因縁の一つでもある。



「恭也が、困ってる。貴方達の力を、貸してほしいんだ」

『先にも申し上げましたが、貴女様には力の下地が備わっておりません。その身で私どもを

振るえば、命を落とすことにもなりかねません。それでも構わないと、仰るのですか?』

「もちろん。友達が困ってたら、助ける。そんなの当たり前のことでしょう?」



 力とは、そういう時のために使うべきだった。相手を制するのではなく、守るために。そ

れが御神の剣の理であり、高町美由希の理でもある。



『ご自分の命を対価にしても、構わないと仰る?』

「そりゃあ、死ぬのは嫌だけど……でも、私にしか出来ないなら、やるしかないよね? 恭

也がピンチなのに見過ごしたら、私は多分、一生後悔すると思う」

『それほどまでに、恭也様が大事ですか?』



 まるで普通の女子高生のような会話だ、と差し迫った状況にも関わらず、美由希は吹き出

した。恭也のことを、そういった意味で意識したことなどなかったが、考えてみると、悪い

人間ではない。



「大事……んー、そこまでじゃあないかな。放っておけない男の子……そのくらいだと思う」

『命を賭けるに、足りますか?』

「それだけあれば、十分じゃないかな。私は、そう思うよ」

『…………覚悟は、解しました』



 二刀の小太刀は宙に浮き、美由希の前で静止する。



『我ら姉弟、貴女様の力となりましょう。その志が胸にある限り、私どもは必ず貴女をお守

りします。仮初の、この命賭けて』



 二刀を掴んだ瞬間、美由希は身体から力が溢れるのを感じた。同時に、この状態が長く続

けば、自分は命を落とすのだということを、理解する。



 力の使い方が解る。今まで見えなかった物が、はっきりと見えるようになった。遠く、市

外の中心部。そこに、広範囲に広がる何かがあった。



 恭也は、そこにいる。訳のわからない確信を元に、全身に気を行き渡らせた美由希は、弾

丸のごとく、駆け出した。
























 







 不可視の壁を右手を小太刀――十六夜で断ち斬った美由希は、足音もなく屋上に着地した。



 所々が破壊された屋上に、猫耳の女性が二人。それに、隅には満身創痍の恭也が転がされ

ていた。女性の一人の拳には、血が付着している。何があったのか、理解するのにはそれで

十分だった。



「一応、確認はするけど……恭也をあんな風にしたのは、貴女達?」

「あたしだよ」



 拳に血をつけた女性が、一歩進み出た。今の今まで泣いてでもいたのか、顔が赤くなって

いたが、立ち振る舞いは戦士のそれだった。



「そういうあんたは何者? 見たところ、この世界の住人みたいだけど――」

「あー、ごめんなさい。私、そういうのに興味ないから」



 女性の言葉を遮るように、左の小太刀――御架月を一振りする。言葉を途中で切られた女

性は、不愉快そうに顔を歪めたが、美由希の視線は彼女を向かず、ずっと、恭也を見つめて

いた。



 静かな、冷たい怒りが、美由希を支配した。両の小太刀を鞘に納め、腰を僅かに落とす。



「恭也の仇は、討たせてもらうよ」

「あの男は、自分で勝手に無抵抗を貫いたのよ。確かに痛めつけたのは私達だけど、それで

仇と言うのは、暴論じゃない?」



 距離を取って遣り取りを見守っていた女性が、会話に割り込む。相対している方の女性と

は異なり、この状況にあってもいくらか冷静なようだったが、そんなことは美由希にとって

はどうでもいい差異だった。



「だから? それでも、貴女達が恭也を痛めつけたことに、変わりはないでしょ? 無抵抗

で打たれたことには、恭也なりの理由があるんだろうけど、私は恭也の立場も、貴女達が誰

かも、何も知らないもの。だから、友達が一方的に傷つけられた、その報復を貴女達にする」



 ここに来て、美由希がやる気だと悟った二人の女性は、戦闘態勢を取った。二人一度に、

というのは流石に分が悪いかと思ったが、報復を前に、敵を選んでなどいられない。元より、

生命力を削って戦う美由希には、贅沢を言う時間など残されていないのだ。



「悪いけど、五体満足で帰れるなんて思わないでね」

「こっちの台詞だよ。事情も知らないのに首を突っ込んだツケは、身体で払ってもらうよ!」



 眼前から消えた女性達に続いて、美由希も神速を発動した。



 仇は、必ず取る。



 心の中で呪詛のように繰り返しながら、美由希は両の小太刀を、抜刀した。































 とあるビルの屋上に、唐突に魔導師の反応が現れた。何かの事情で隠蔽魔法を使っていな

い限り、管理局の戦艦では、管理局に登録された魔導師の魔力反応を分析できるようになっ

ている。



 現れた魔導視の反応は、二つ。エイミィの分析によれば、それは間違いなくリーゼロッテ

とリーゼアリアの二人だと言う。しかし――



『何か戦闘してるみたいだよ! 魔力反応はあるけど、魔導師じゃない。恭也君と似たよう

な反応だけど、多分、恭也君じゃない』

「多分って何だ!」



 リンカーコアに依存した魔法を使う魔導師でなければ、固体識別はできないのだ。恭也の

扱う技術に関しては、特共研でも解析が完了していない。恭也一人であれば、その識別も容

易なのだが、それが複数になると、もう勘で答えるしかなくなる。



「すると、彼と同じような人間が他にもいるということか。なのはといい、その家族といい、

この都市の住人には、規格外が多すぎる!」

『それに関しては同意かなー。とにかく、闇の書の方も忙しいみたいだから、リーゼ達、連

れてきて。転送ポートは、準備しておくよ』

「了解。クロノ・ハラオウン、現場に向かう」



 視界に、そのビルを捉えた。闇の書との戦闘が始まった中、そのビルの上でも、別の戦闘

が行われていた。弾ける魔力の光が、よく見える。何度も叩き込まれたのだ、忘れるはずも

ない。あれは、リーゼ姉妹の魔力だ。何度も弾けては、虚空に消えていく。



 それの意味するところを理解して、クロノは戦慄した。つまりは、あの二人と対峙して、

それでもなお、戦い続けていられるということだ。管理局でも最強の一角である、あの二人

を相手に。



「化け物め!」



 一度、腹の底から吼え、屋上に見える人影全てに、スティンガー・ブレイドを放つ。非殺

傷設定の魔法ではあったが、戦闘をしていたにも関わらず、リーゼ姉妹ともう一人は、自分

に打ち込まれた全ての魔力刃を、叩き落としていた。



 その間に、クロノは屋上に着地する。



 そこは、見るも無残な体をしていた。地面は抉れ、フェンスにはそこかしこに穴が開いて

いる。出入り口は完全に崩壊し、貯水タンクは原型を留めていない。



 隅に寝かされた恭也も、無事ではなかった。うつ伏せに倒れた彼は、ぴくりとも動かず、

目に見える限りでも、相当な怪我をしていることが見て取れた。



 しかしその周囲だけは、この惨状の中でも、台風の目のように無事だった。死闘を行いな

がらも、気を配るだけの余裕が、彼女らにはあったのだろう。その事実がまた、クロノを苛

立たせた。



「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 即刻、戦闘行為を中止しろ!」

「何しにきた、クロスケ! 邪魔だからどいてな! さもないと怪我するよ!」

「五月蝿い! この忙しいのに、何をしてるんだ君達は! いいか、これで最後だ! 即刻、

戦闘行為を中止しろ! さもないとこの場で、全員逮捕するぞ!」



 かつての弟子の烈火の如き剣幕に、リーゼ姉妹達は渋々、構えを解いた。酷い物である。

二人とも全身が血に塗れ、リーゼロッテは腱が切れているのか、右手はだらりと下がってお

り、リーゼアリアは左肩から袈裟懸けに、大きな傷を作っていた。



 まだ、戦闘は続行できるだろうが、決して軽い怪我ではない。二人とは長い付き合いにな

るが、ここまでの怪我をしてる二人を見たのは、クロノも初めてのことだった。



 この二人を相手に勝つことなど不可能だと、恭也にいったばかりであったが、ここまで二

人を追い詰める人間がいたという事実に、今の状況も忘れて、クロノは一人戦慄した。



「そちらも、剣を収めていただきたい」



 振り返ったクロノの視線の先にいたのは、見覚えのある女性だった。なのはの義姉の、高

町美由希。剣術をやるとは聞いていたが、それが師匠二人を相手に出来るほどだったとは想

像もしていなかった。両手には、妙な魔力反応を持つ刀が握られていたが、その二刀の刀身

は、腕から流れる血で染められていた。



 どちらが劣勢かと言えば、それは明らかに美由希の方だった。身体に動かない箇所はない

ようだったが、全身隈なく傷に塗れ、そこから溢れた血が全身を染めている。まるで、赤い

幽鬼である。無論、誰が見ても無事でななかったが、両の手は確かに刀を握り締めており、

瞳は戦意を失っていなかった。



 声は聞こえているようだったが、意味まで伝わったどうかは怪しいものだった。美由希は

クロノをちら、と見ると、一歩、また一歩を踏み出し、そこまでが限界だったのか、その場

で前のめりに倒れた。



 倒れた美由希を中心に、血溜りが広がっていく。一刻の猶予もならない、血相を変えたク

ロノは、S2Uに向かって叫んだ。



「エイミィ! 現場で二名の重傷者を確保! アースラで応急処置をした後、本局医療局へ

移送する! 二名とも出血が酷い! 輸血の準備を忘れるな!」

『了解! 転送ポート、60秒後に開くよ!』



 瞬間、屋上全体を多くほどの大きさの魔方陣が、展開する。気を失っている恭也を抱え、

美由希の隣に寝かせると、リーゼ姉妹が二人に駆け寄り、治癒魔法をかけ始めた。リーゼロ

ッテのそれはリーゼアリアに比べると拙く、ともすればクロノよりも下手に見えたが、この

状況ではないよりマシに思えた。



「どうして、戦闘なんてしたんだ。彼らと戦う意味が戦う意味などないことくらい、君達な

ら分からないはずがないだろう?」

「意味がないってことは、解ってるよ。でもこれは、私達がやらなきゃいけない戦いだった

んだろうさ」

「誰も、褒めてはくれない。怪我をするだけして、下手をすれば罷免され、運がなければ命

を落とす。得るものなんて何もないじゃないか。そんな戦いに、必然性があるのか?」



 並んで治癒魔法をかけながら、リーゼ姉妹に問う。リーゼアリアは何も答えない。ただ、

倒れた美由希に視線を落とし、治療魔法に専念している。恭也を治療していたリーゼロッテ

は、クロノの問いに顔を俯かせると、自嘲気味に答えた。



「…………やらなきゃならないんだろうさ。それが、こうすることを選んだ、あたし達の宿

命なのかも。でもね、クロスケ。少しだけ、本当に少しだけ思うんだ。思うことすら、いけ

ないことなのかもしれないけど、こんな思いをするんだったら…………」



 言いたいことは、誰にでも言う。ギルバート・グレアムの使い魔にして、最強の魔導師の

一角。付き合い始めてから言い淀んだところなど見たことのないリーゼロッテが、半身であ

るリーゼアリアを気にするように、ちら、と一瞥した。



 リーゼアリアは答えない。自分の半身を見ることもなく、ただ、無言でもって彼女の言葉

を促した。



「……魔導師になんて、なるんじゃなかったって」

「使い魔の君が、自分が魔導師であることを否定するのか」

「使い魔だからって、魔導師にならなきゃいけないってことはないだろ? そういう生き方

も、もしかしたらあったんじゃないかと思ったのさ」

「立ちふさがる者は、叩いて潰してきた強気な君が、珍しい。どういう心境の変化だい?」

「別に。あんたに話すことじゃない。そういうことは、意地を通せるようになってから言う

んだね」



 不貞腐れたように、リーゼロッテは口を噤んだ。これ以上は何も喋らない、というサイン

である。恭也達のことも含めて分からないことだらけだ。聞きたいことは山ほどあったが、

今、彼女達からは何も聞き出すことはできないだろう。




 クロノには、恭也や美由希が負傷することも、リーゼ姉妹が怪我をすることも納得できる

ものではなかったが、生み出された結果は、ここにいる四人全てが、受け入れているようだ

った。



 なるべくして、こうなった。関わった全員がそう思っているのなら、この場に関しては部

外者であるクロノに、どうこう言う資格などない。



 転送魔方陣が、輝きを増す。遠くに、闇の書の意思が、光を放つのが見えた。