彼にとっての厄日 前編











「おいしい〜ものを〜探しに〜」
舞っている。
真一郎の先にいる少女は、歩きながら舞っていた。
白を基調にした服にスカートにコート。
おまけに髪は限りなく白髪に近い銀髪で、とにかく全身白ずくめの少女である。
「今日も〜行くの〜私はざから〜」
調子の外れた歌を歌いながら挙句の果てに回りだす。
何が楽しいのか解からなくはないが、保護者の彼としては恥ずかしい限りである。
「ざから…もう少し静かに歩けないかな」
「いいじゃないですか。こんなに楽しいんですから」
「翠屋に行って、俺が奢るだけでしょ?」
いつものことだ。
少女には一応こづかいはあげているはずなのに、彼はやけに奢るはめになっている。
その理由はその時で様々だが、学生時代から数えれば結構な額になる。
社会人になってからはそれほど苦ではなくなったが、昔は苦労した物だ。
「甘いのです!」
回転を止めて、ざからは真一郎にびしっと指を突きつけた。
周囲の人々の視線が否が応でも集まる。
真一郎が恥ずかしいと思うよりも先にざからは続けた。
「今日、この日にご主人様が奢ることに意味があるんです。きっと今日のお菓子はおい
 しいですよ」
「あそこのお菓子はいつだっておいしいでしょ?」
「でも今日は特別なのです」
はあとため息をつくと、くいっと袖を引っ張られる。
その方を見下ろすと、小さな瞳と目が合った。
「特別なの…」
小さな瞳に並々ならぬ決意が篭っている。
茶色い髪をポニーテールにして、その上にサイズの大きい帽子を乗っけた少女。
髪の色が似ていてかわいいため手を繋いで歩いていると、彼自身と兄妹と見えなくもない。
「ついに久遠まで食い意地か張っちゃった…」
「まるで私が悪いみたいな言い方ですけど?」
ざからの目が少し険悪になる。
これは前から彼女に言われていることだが、彼は久遠に甘いらしい。
彼自身そうは思っていないが、他の同居人や知り合いに聞いても同じ答えが返ってきた。
口の悪い漫画家などからは、「ロリコン予備軍」などと非常に懐かしいあだ名で呼ばれ
る始末だ。
「別に、ざからのせいだなんて言ってないよ」
だだ、彼はそんな自覚はない。
いつもどおりに―彼の感覚で言えば平等に―接しているし、久遠だけを特別贔屓してい
つもりはない。
それだけに、他の女性達から見れば始末が悪いかもしれなかった。
「いいですけどね…」
口ではそう言っているが、ざからが拗ねているのは誰の目にも明らかだった。
(最初に会った時はもっと落ち着いた「ひと」だと思ったんだけどなぁ)
思ったところで、彼女は今ここで拗ねているという現実は変わらない。
「今日は、ざからの好きな物好きなだけ頼んでいいよ」
真一郎の知る限り、拗ねたざからにはこのての攻撃が一番効果的だった。
「ほんとですか!?」
途端に拗ねていた顔が喜びでいっぱいになる。
「ただし、お持ち帰りはなし。それでも俺のお財布を考えてね」
「分かってます」
「久遠は…」
「ああ、いいよ。久遠も好きなだけ食べて」
「ありがと…」
「ときに少女達よ。今日が何の日だか知っているかい?」
「知ってます。今日はバレンタインデーです」
「そ。で、それはどういう日だったかな?」
「好きな人に、お菓子を贈る日なのです」
間違ってはいないが、肝心なところが都合のいいように抜けている。
久遠もそれに頷いていた。
彼女達が頷いたのなら、それは彼の家庭全体の決定だった。
なにしろ男性が彼一人しかいないため、女性の権限は絶対である。
こういう時は肩身が狭いと、数少ない男の知り合いである耕介や恭也に話たら二人とも
妙に賛同してくれた。
思えば三人とも似たような境遇である。
「どうしたんですか?ご主人様」
「いや、なんでもないよ。俺は何を食べようかな、とか考えてただけさ」
「今日のお勧めはやっぱりチョコですよ。昨日、お店の前の看板に書いてありました」
翠屋に連れて行くことになったのは今日のはずなのだが、まあ気にしないことにする。
美少女二人と一緒にバレンタインに「で〜と」。
傍から見ればそう悲観するような状況でもないのではないか。
むしろ、喜ばしいくらいである。
例えそれが、もしかしたらお菓子だけで軽く五桁は食べそうな少女達であっても、それ
はそれで嬉しいはずだ。
「はあ…」
お金に糸目はつけないつもりだが、それでもため息がでた。
「しんいちろう…どうしたの?」
「いや、何でもないよ…」
何でもある顔に微笑みを浮かべて、久遠の頭を撫でる。
気づいたら、もう翠屋の前まで来ていた。
思っていたよりも混雑はしていない。
世間一般的にはチョコを当日に調達するような少女もいないだろうから、考えてみたら
当たり前かもしれない。
ドアのカウベルが鳴った。
待ちきれなくなって先に店内に入った二人を追って、真一郎も翠屋のドアをくぐった。













「相川さんいらっしゃい。で〜とですか?」
当たり前のようにデザートの完全制覇などをたくらんでいる少女二人を、紅茶を飲みな
がら眺めていると、桃子が笑いながら現れた。
「なんとも色気のないで〜とですけどね」
「でも、こんなにかわいい女の子をつれてるんだから」
「そうですね。例えそれで、すっからかんになっても我慢することにします」
桃子の笑顔が深くなる。
少女達の食べようを見れば、それが冗談でないのは明らかだからだ。
「もし、御代が足りなくなったらつけでいいですから」
「恩にきます」
喫茶店でつけと言うのも格好悪い話だが、真一郎ですら彼女らの食欲を見くびってた
ので、笑い話ではすまない。
「あれ?美由希ちゃんは?」
ピークは過ぎたと言っても、今日はバレンタインである。
店内は満席だし、それなりに忙しいはずなのだが(何しろ店長がここにいるので、あま
り説得力がない)美由希の姿は店内のどこにも見えなかった。
厨房には…いないだろう。間違いなく。
美由希の料理の腕前は真一郎も知っている。
ゆっくりと…非常にゆっくりと腕前も上がってきてはいるし、それを桃子も気づいてい
るだろうが、それでも彼女を厨房に立たせる勇気はないだろう。
「家で頑張ってますよ。相川さんにチョコレート送るんですって」
紅茶のカップを持った手が、びくりと止まった。
冷や汗が流れる。
美由希が?チョコレート?
聞き違いでなければ自分に作ると桃子は言っていたのではないだろうか。
はっきり言って危険だ。
前述の通り、美由希の腕前はまだまだ未知数だ。
基本的に溶かすだけのチョコレートであったとしても、油断はできない。
しかも、バレンタインだから相当に気合を入れた物を作ってくるだろう。
レンや晶も高町家にはいるだろうが…それでも、安全率は五分以下である。
「た…楽しみですね」
自分で言っててぎこちない気もするが、桃子は別に突っ込んでこなかった。
「それでは、ごゆっくり。ざからちゃん、久遠ちゃん、またね」
二人の少女の頭を撫で、桃子は厨房へと消えていった。
しばらく、ざから達のスプーンを動かす音だけが耳に響く。
「ご主人さま、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと人生について考えてたんだ…」
そう言えば、ざからは美由希の料理に遭遇してなかった。
あの時味見をしたのは、料理を作っていた真一郎と雪だけだったので、彼女の腕前のひ
どさ―もとい、未熟さ…は、まだ家族には知れ渡っていない。
(こいつにも食わせてあげよう…)
不穏なことを考えつつ、真一郎は残りの紅茶を飲み干した。













「さて…本日第二段」
真一郎は一人、大きな洋館の前に立っていた。
ざからと久遠はすでに家に帰してある。
誰か知人が来たら待たせておくように言っておいた。
まあ、今日わざわざ家まで来る人間などそういないだろうが、用心のため…
「しかし…チョコを取りに来いってのもなんだよなあ…」
ぼやきながら、とぼとぼと洋館への道を歩く。
一番手前の門を開け、呼び鈴のあるドアまで後少し。
彼は一歩足を踏み出して―それが地面に突く前に動きを止めた。
足の下を、何かが通り過ぎていく。
それは離れた木にぶつかって気のな音を立てながら、回転して地面に落ちる。
胡乱に見下ろす。ゴム製の弾丸。
「不法」侵入者撃退用にこの屋敷の主が開発したはずのものだった。
ただ、真一郎は不法侵入している覚えはないし、それになにより呼び鈴よりも前にこん
な物があっては、主の同属でもない限りは無傷でたどり着くのは不可能だろう。
だが、真一郎にはとっては少し面白いだけのおもちゃだった。
呼び鈴まで、無造作に歩みだす。
その動きを察知し、そこかしこに配置された銃身からゴム弾が発射される。
頭部、腹部、足元…わずかにタイミングをずらして、ほとんど同時に。
(癖が出てるなぁ)
首を傾げ腰を引き、ステップを踏んですべてのゴム弾を避ける。
機械系にはあまり詳しくないが、狙い方に屋敷の主の癖が出ているのだった。
次々と、思ったとおりの場所を狙って射出されるゴム弾。
それらを何の苦労もなく、ダンスでも踊るかのように真一郎は避けていく。
ふと、いきなりゴム弾の嵐が止まった。
呼び鈴まで、およそ五十メートル。
本気で走りこめば、それこそ一瞬で辿り付ける距離である。
真一郎は両目を閉じて笑った。
(ここまで来たら付き合ってあげないとなぁ)
その瞬間、周囲に巧妙に隠された銃身から十近いゴム弾が一斉に、それでもタイミング
をずらして射出された。
目を開けて、のろのろと動く弾丸の間を無造作に動く。
タイミングをずらしていた分、隙間が開いて避けるのは簡単だった。
避けながら呼び鈴まで動く―到着。
いつの間にか、ゴム弾の雨は止んでいた。
あっさり過ぎるのに不気味さを感じながらも、真一郎は呼び鈴に指を伸ばす。
―押した。
それだけである。何の音も鳴らないし、中から声も聞こえてこない。
「壊れてるのかな?」
呟いて首を捻り翳した掌に、ばしっとゴム弾が当たる。
呼び鈴が射出のスイッチになっていたようだ。
気の緩んだところを狙う…発想は悪くないが、つめが甘い。彼女のやりそうなことだ。
「もう少し考えるようになってくれれば、先生にだって勝てそうなのにな…」
今度は呼び鈴ではなくノッカーを鳴らす。
しばらく待つとドアが開き、ノエルが顔を出した。
「いらっしゃいませ、真一郎様」
ノエルはいつものように無表情…のように素人なら見えるだろう。
だが、彼女の顔には少しばかり「心配」が浮かんでいた。
「こんにちはノエル。安心していいよ。別に怒ってないから」
「そう…なのですか?」
「うん。忍がこういう無茶をするのは、いつものことでしょ?」
「ありがとうございます…」
そう言ってノエルは微笑むと、真一郎を居間に案内する。
「お嬢様方、お連れしました」
「ありがとう、ノエル」
ソファに座って雑誌に目を落としていたさくらが顔を上げた。
ノエルは一礼すると、台所の方に消えていった。
「こんにちは先輩。お怪我はありませんか?」
「お怪我…ってさくらも「あれ」やられたの?」
「いえ…「あれ」は先輩だけみたいですよ。私が来た後に色々といじってましたから」
「あのお嬢…」
「あ、真。いらっしゃい」
すると、まるで自分には何の落ち度もないかのような顔で忍が現れた。
それに真一郎は最高の笑顔を向けると、手招きする。
「なになに?」
近寄ってくる忍。
十分に近付いたのを見計らって、真一郎はいきなりその首を締め上げた。
「お客さんに対して…いきなり「あれ」はないだろうが〜この!」
「真…苦しい、ギブアップ」
本気で苦しそうに真一郎の腕をばしばし叩く忍。
さくらも止めようか迷っているような様子だったが、真一郎は続けた。
「幸い俺だったからよかったけど、もし他の人だったら怪我してたよ」
「それは大丈夫。入ってきたのが真だってのはちゃんと確認してから作動させたから」
「ほ〜」
ゆっくりと、真一郎は忍の首から腕をほどく。
ほっと息をつく彼女の背後に回り込むと、いつか何かの本で見た吊り天井のような関節
技―確かパロスペシャルとか言ったか―をかけた。
「他に…何か言うことあるでしょ…」
「ごめん…私が悪かった…離して…」
「おし。これからは気をつけてね」
今度こそ本当に開放すると、忍は首や肩を鳴らした。
「でもさ、女の子に関節技かけるなんて真ってばひどくない?」
「それ以前に承諾を取らないで撃つことのほうが問題あると思うな、俺は」
これはいまいち忘れそうになることだが、忍は年頃の女の子であるし、お嬢様なのだ。
見た目は美人だし普通に会話するぶんには何の問題もないが、いちいち撃たれるのは流
石に疲れる。
付き合いは四年くらいになるが、この屋敷を訪れて問答無用で撃たれたのはまだ真一郎
だけだろう。
まあ、そんなことは追々注意するとして―
「で、俺は何のために呼ばれたの?」
「ああ。ちょっと真に感想聞きたかったんだ」
「侵入者狙撃用のシステムだったら他を当たってね」
「もうそれはいいから…これなんだけど」
そう言って、どこからともなく忍の手には皿が乗っていた。
さらにその上には、黒っぽい物体。
匂いはほのかに甘く、形は整っている。
「チョコだね…誰が作ったの?」
「私。初めて作ったから、真に感想聞きたいなって思って」
「一人で作ったの?」
「ううん。ノエルに手伝ってもらったけど」
「まあ、いいか。それじゃ失礼して…」
手のひらサイズのそれを手にとって折ると、口に運んで噛み砕く。
三人の女性の視線が集まる中、真一郎はゆっくりと口を動かし、飲み込んだ。
「悪くないんじゃないかな。初めてなんだったら上出来だと思うよ」
その発言に、忍はほっと胸を撫で下ろした。
「良かった…まずいとか言われたらどうしようかと思った…」
「経験者がついてるんだったら、普通は失敗しないものだよ」
そう、それが普通なのだ。
真一郎の脳裏に一緒に料理を作って失敗した少女の姿が浮かぶ。
チョコを作ってると聞いたが…今回はどうだろうか?
「手作りみたいだけど、これ誰にあげるの?」
「恭也にあげるの。これから包んで持っていくつもりだけど…」
「彼女いるけど、それでもいいの?」
「いいの!私の愛は変わらないんだから」
「そんなものかね…」
恭也と那美が付き合うようになって結構たつが、こんな所にまだ諦めていない少女がいた。
聞けば、遺産がらみの事件があってその時以来恭也は「夜の一族」の秘密を知るように
なったらしい。
ついでに、那美もノエルのロケットパンチの餌食になって以来ここでメイドをして働く
こともあるらしいのだが…遠まわしに忍がいじめてないかどうか不安である。
(まあ、忍に限ってそんなことはないと思うけど…)
それでも、恋をしている少女というのは向こう見ずなものだ。
さっきのゴム弾の件もあるし、どちらかに注意しておいてもいいだろう。
「真一郎様、私からも受け取ってもらえますか?」
忍が技をかけられるのを黙ってみていたメイドのノエルが、真一郎に綺麗にラッピング
された物を差し出す。
「私も恥ずかしながら作ってみました」
「ありがとう。ノエルのなら安心だ」
「真、今失礼なこと言った」
「さて、何のことだろうね」
「それから真一郎様、これを」
そう言うと、ノエルはあらかじめ用意しておいたらしい紙袋を真一郎に渡した。
「過去の統計から、今日はきっとそれが入用になると思いましたので」
「ありがとう」
素直に真一郎は受け取った。
特殊な職業で交友範囲が狭い分、学生の時よりはチョコをもらう数も減り、袋まで持ち
だす機会はしばらくなかったのだが、せっかくの好意ありがたくいただいておく。
「先輩、まずはお届け物です」
さくらが差し出したのは、上品な感じのする包みだった。
見たところ買った物のようだが、包みからして値は張りそうであった。
「千堂先輩、ここの所すごく忙しいらしいので私が代理です」
「そっか…ありがとうって電話しとかないとね」
現在医学部六年生の瞳の忙しさは半端ではない。
普通なら休みくらいはあるのだろうが、そこは彼女、根がまじめなためあまり時間の使
い方を知らないらしい。
休みはちゃんと取ったほうが…ということを話す機会がある度に真一郎は言うが、毎回
『真一郎の苦労に比べれば―』と逃げられてしまう。
まったく瞳にはいつまでたっても敵わない。
「それで、こっちは私からです」
二人分のチョコを早速紙袋に入れていると、今度は手作りらしい包みが差し出される。
「さくらが作ったの?」
それを受け取って上から下から眺めながら、真一郎が言う。
「ええ、先輩には及ばないと思いますけど…」
「そんなことないよ。ありがとう」
微笑んでチョコを紙袋にしまおうとして、その手がぴたりと止まる。
さくらがじ〜っとこちらを見つめていた。
「どうしたの?」
「ここで食べないんですか?」
「いや、家に帰ってからゆっくり食べようと思って…」
さくらの顔が少しだけ―それこそ真一郎でなければ見逃してしまいそうなほど僅かな時
間ではあったが―引きつった。
「家に帰ってから食べるんですか?」
「そのつもりだけど…」
「でしたら、一人の時に食べてくださいね。決して他の人達に食べさせたりしないでく
 ださい」
「さくら…」
真一郎はため息をついて、捲くし立てるさくらを見やった。
さくらは気まずげに目を逸らす。
「何か…混ぜたでしょ?」
「その…ちょっと『元気』になるお薬を…少し」
説明の歯切れが悪い上に『元気』ときてる。
それが単なる栄養剤とかではないことは、真一郎でなくとも明白だった。
「そこまでしなくてもさ…」
「だって先輩、私が「助けて」って言ってもなんだかんだ言って断るじゃないですか」
どうやら開き直って拗ねることにしたらしい。
ちなみに忍達はこんなさくらを珍しがって助け舟を出してくれる様子もない。
「未婚の女性の家に男が押しかけるってのもね」
「それは、この世界で一番先輩に似合わない台詞ですよ」
「そりゃそうだ」
言ってる自分が納得していては世話がない。
かと言ってさくらの『相手』をするのも―実際何度か『助けた』こともあるが―嫌では
ないのだが、ほいほい安請け合いするのも、それはそれで気が引ける。
だが、この相川真一郎という男には若干の下心は存在するが悪意はない。
頼まれれば何とかしたいと思うのは、自然なことだった。
「じゃあ『次』の時はさくらのところに行くから」
「ほんとですか?」
「うん。まあ、これも運命さ」
喜ぶさくらと、どうしたものかと達観する真一郎。
その横で思い人はいても頼むに頼めない忍がぽつりと呟く。
「…真ってば、けだもの」
その呟きはしっかりと彼の耳にも届いていた。





関係のない話ではあるが、真一郎には試してみたい関節技のストックがたくさんあった
…ということをここに付け加えておく。